人は時としてほんの一瞬の出会いで、その先の道を大きく決定してしまうことがあります。
アラスカの写真で知られた星野道夫さんは、19歳の時に古本屋で偶然手にした「ナショナル・ジオ・グラフィック」のエスキモーの写真集に魅せられ、やがてアラスカへと旅立ち自然や生き物と向き合うカメラマンになります。
またフランスの大道芸人フィリップ・プティは、17歳の時に歯医者の待合室で建設予定のワールドトレードセンターの新聞広告を目にした途端、自分がなしとげるべきことを直感し、治療も受けずに歯医者を飛び出します。そしてその6年後、本当にニューヨークに渡り110階建ての両ビルの屋上にロープを張り命綱なしで渡り切ったのでした。
それは史上最も美しい芸術犯罪と呼ばれ、「マン・オン・ワイヤー」というドキュメンタリー映画にもなりました。
先日、一冊の写真集が届きました。
フォトジャーナリスト長倉洋海さんがアフガニスタンの英雄「マスード」の没後20年を記念して発刊した「MASSOUD」です。いまだ混迷をきわめるアフガニスタン情勢の中、若き革命家マスードの「敗れざる魂」と、長倉さんの揺るぎない思いが静かに伝わり胸を打たれます。
このたびのオープンに際し、ひとりでも多くの方々にご覧いただきたいと思いショップ内に展示いたしますので、よろしければぜひお手に取ってご覧ください。
ギャラリーでは原夕希子さんの作品を20点ほど展示致します。「ゆびふし」に美しさを見出す作家のイノセントな世界観―。じっくりとご堪能いただければ幸いです。
そして、当ショップ&ギャラリーで出会った一枚の写真や絵画、あるいはひとつのオブジェ作品を通し、誰かの未来がほんの少しでも拓けることがあったなら―、
あとわずかとなったオープン日を前に、そんなささやかな願いに包まれております。